いつから自由になったか

幼稚園の時に、私は母親の履いているハイヒールに憧れていた。

「いつになったらハイヒールはいてもいい？」って聞いたら、「高校生になったら履いてもいいよ」って答えたのを確かに覚えてる。

幼稚園の時の私はロングヘアにパーマを当てて、ルーズソックスを履いていた。その当時はギャルブームだったのだと思うが、ギャルに憧れていて早く高校生になりたいって思っていたのを覚えている。（なんというおませさん）

母親が昔から私の着る服を決めていたこともあって、いつの間にか私は自分の服に関して意見することができなくなっていた。

本当はピンクの洋服を着たかったし、俊足の水色のスニーカーとかキャラクターの物を持ちたかったけど当時の私は無印良品やらGAPやらの服を着せられていて、母親にそんなことを言うとダサいと言われたりするのが怖くて言い出せなかった。

中学2年の時にZipperという雑誌で、モデルのayamoちゃんを見たときに私のお洒落への情熱が生まれた。

その時のayamoちゃんのカットはしっかり覚えていて、ケミカルウォッシュのデニムのシャツをワンピースの代わりにして着て、cowcowのあの伊勢丹の紙袋柄の黄色いチェックのひざ掛けサイズのマフラーをぐるぐる巻きにして、ラバーソールを履いていた写真だった。

私はそれまで自分で服を買ったことがなかったけれど、その雑誌を家で見てすぐに地元の繁華街にくりだして、同じ店で同じものを買って自由へと一歩踏み出したのだった。

ラバーソールなんか、今見たら痛すぎてゾゾゾっとするような代物だけれど当時の私はあの靴を履いていれば他の皆とは違うんだぞって思えて自分の自信につながっていた。

買った靴を見た母親は馬鹿にするでもなく「母さんの若い時履いてたわ〜」って言って、いつの間にかその時から今まで私の着る服を認めてくれるようになっている。

今の私はもう高校の頃ぐらいから「あなたらしい」が確立されてきていて、人に口出しされたからどう思うとかいうこともないし、そもそも口出しされるものじゃなくなったんだと思う。

それでも最近は、初めて手に取った雑誌がZipperだったのは間違いだったのかもしれないと少し後悔もしている。

高校を卒業してからずっと金髪で古着を着ていたりするけど、大学でモテそうな女の子は茶髪ふわふわセミロングにスカートをはいてヒールを履いて小さな合皮のバッグをもっているし、私がそっち側の人間になれなかったのは確実中学生の時に何かを踏み外したからだと思っている。

個性でしか勝負できない自分が嫌だと思うこともあるし、それが好きだから着ているだけだという思いもあるけどどっちが本当なのか自分でも分からない。

自由になれているのかなれていないのかわからないな。